電帳法の実務上の論点まとめ(2022年9月最新版)


【概要】

本年2022年1月より改正電子帳簿保存法が施行されました。
昨年2021年末に電子取引の電子保存義務化は2023年12月まで2年間の紙保存容認となりました。
電子保存の対応をする準備期間が延びたとホッと胸をなでおろしている会社様も多いのではないでしょうか。

電子帳簿保存法における保存の方法については実務上の不明点がまだまだ多く、準備期間である今年に入ってから、多くの問い合わせが国税庁に寄せられているのが現状のようです。
そのような中、2022年6月30日に国税庁はすでにリリースしていた電子帳簿保存法に係る一問一答を論点を増やした形で改定を行いました。

2022年1月に公表していた「お問い合わせの多いご質問」をこの一問一答に統合し、さらに2022年(令和4年)度税制改正にかかる論点、及び国税庁に問い合わせがあった内容などを盛り込んで改定を行っています。
問い合わせの多い項目に「★」を付けるなど、メリハリをつけた表示となっています。

今回はこの電子帳簿保存法の改定一問一答をそれぞれ「帳簿書類」「スキャナ保存」「電子取引」のカテゴリごとに読み解き、実務上特に気になるこれまで不明瞭だった論点の取扱いを最新版としてまとめてご説明いたします。

【帳簿書類関係の改正一問一答】

■画像ファイルやPDF形式に変換して保存されている電子データ<問22>

国税関係帳簿(いわゆる会計帳簿)に係る電子データ保存については、「ダウンロードの求め(電磁的記録の提示・提出の要求)」に応じることができるようにしておく必要がありますが、画像ファイルやPDF形式に変換して保存されている電子データについては、一般的には、検索性等の劣るものであると考えられます。
したがって、検索性等を備えたデータ(CSV形式等)も併せて保存しているなど、検索性を担保した保存方法が必要
となります。

■代表者印等が表示されていない状態の電子データ保存<問25>

またPC等で作成した請求書等を紙出力したものに代表者印や社判等を押印して相手方に送付した場合について、代表者印等が表示されていない状態の電子データ保存をもってその請求書等の控えの保存に代えることができることとした取扱いが示されました。
これは原則としてはPCで作成した請求書等に加筆修正を加えると適正な電子データ保存の方式にならないとしていますが、例えば単なる代表者印等のみの加筆である場合はその控えとしての適正な保存であるとしています。(図解1)

【スキャナ保存関係の改正一問一答】

■収入印紙が貼付された契約書等の書類<問3>

スキャナ保存に係る電子データ保存については、スキャナで読み取り、折れ曲がり等がないか等の同等確認を行った後であれば、紙による領収証等の書類は即時に廃棄することとしています。
今回の改定では収入印紙が貼付された契約書等の書類についても収入印紙を貼付した後にスキャナで読み取って最低限の同等確認を行った後であれば、収入印紙が貼付されたその契約書等を即時に廃棄しても問題ないことと明文化しています。

ただし、印紙税の誤って過納などがあった場合の還付の申請については、その誤って過納となった事実を証するために紙原本の提示が必要となるため、スキャナデータとして保存した後の電子データに基づいて印紙税の誤った過納に係る還付を受けることはできないため注意が必要となります。(図解2)

【電子取引関係の改正一問一答】

電子取引に係る電子データ保存については、電子データ保存義務化の観点から、保存義務者の関心が最も高く、また実務上も多くの論点が存在するため、今回の改定も最も多くの項目が追加されています。
重要な論点を解説してまいります。

■クレジットカードの利用明細データ等<問4回答(へ)>

クレジットカードの複数の購入取引内容が記載されたWeb明細を受領した場合に、そのWeb明細データ自体も電子取引に該当することから、電子データ保存が必要です。
また、そのWeb明細に含まれている個々の取引についても、請求書・領収書等を電子データ(電子領収証)として保存している場合には、クレジットカードの利用明細データ等とは別途、その電子領収証保存が必要
となる取扱いが追加されました。
さらに消費税の仕入税額控除要件の観点からもクレジットカードのWeb明細と個々の取引明細(電子インボイス)の両方をもって適格請求書の記載要件を満たす場合には、その両方の電子データを保存する必要があることを申し添えておきます。(図解3)

■インターネットバンキングを利用した振込等<問9>

インターネットバンキングを利用した振込等については、その取引情報の紙正本が別途郵送されるなどといった事情がない限り、EDI取引として電子取引に該当します。この場合の電子帳簿保存法上、保存しなければならない記載内容は、振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等が記載された電子データとなり、そのデータ(又は画面)をダウンロードする又は印刷機能等によってPDFファイルを作成するなどの方法によって保存を行うことになります。

■データの内容を合理的な方法により編集された状態で保存されたもの<問37、40>

買い手側においてExcelやWordのファイル形式で受領した電子データをPDFファイルに変換して保存したり、相手方からパスワードが付された電子データを、パスワードを解除してから保存することは、取引内容が変更される恐れのない合理的な方法による編集と考えられるため、適正な保存方法として問題ないこととなります。
また売り手である自社が発行した請求書データの保存について、発行した請求書データの内容について変更されるおそれがなく、合理的な方法により編集された状態で保存されたものであると認められるデータベースであれば問題ないこととされています。電子データ保存する場合には、必ずしも買い手である相手方とやり取りしたデータそのものを保存しなければならないとは解されないこととしています。

■サイトからダウンロードできる領収書等<問17、39>

インターネットサイトからダウンロードできる領収書等のデータの電子データ保存については、そのデータを確認できることとなった時点が原則的な電子データ保存を行うタイミングだと考えられます。
ただし領収書等データについては、その取引の日が属する年分の保存データであることから、適宜のタイミングでまとめてダウンロードを行う場合であっても、その年分中にダウンロードを行い、要件に従って保存を行う必要があることに注意が必要となります。
またデータ保存については、PC上やサーバ上のみならず、スマートフォン上でも、真実性や可視性の保存要件を満たしているのであれば、適正な保存方法として認められています。

■雑所得者の業務に係る電子取引の保存の範囲<問59>

2022年(令和4年)分の所得税法上の雑所得(副業として行っているような講演料収入、原稿執筆収入)からは、前々年の収入金額の合計が300万円を超える場合には、そのやりとりした請求書・領収書等「現金預金取引等関係書類」を電子データで授受した場合には電子データ保存する義務が生じることになるので注意が必要です。
裏を返せば、上記の「現金預金取引等関係書類」のみを保存すればよく、それ以外の書類等については保存義務が生じないと解されます。

 

※電子取引の電子データ保存義務化については、弊社の「電子帳簿保存法セミナー」において、より詳しく解説を行っておりますので、この機会にぜひご視聴ください。
【電子帳簿保存法セミナー】改正電子帳簿保存法への対応【最新情報】
https://j-creas.com/seminar/8331/

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